星野喜一(ほしの きいち)さん:寺泊養鯉場
星野喜一(ほしの きいち)さん

1998年第30回全日本総合錦鯉品評会種別日本一賞に輝いた寺泊養鯉場の銀鱗紅白は、いまや「寺泊銀鱗」と呼ばれ世界中の愛好家から愛されている。現在、当主の星野喜一氏は、寺泊銀鱗の体型と銀鱗の銀質にこだわりながら、紅白・御三家以外で初の全国大会での総合優勝を目指している。


奥様、お孫さんと私は、1960年代初頭の18歳頃から小遣い稼ぎの一環として錦鯉に携わりました。当時、平日は鉄鋼業の工場で働き、休日は小千谷市の錦鯉屋(都屋)を手伝う生活をしながら、日当としてもらった稚魚千匹を泥池に流して、育てては売る、育てては売るということを繰り返したのが始まりです。当時の錦鯉ブームも相成ってか、小遣い稼ぎの錦鯉が本業以上に稼いでいました。本格的に錦鯉に携わり出したのは、星金養鯉場で働き始め、泥池の管理を任されてからです。その後、1967年24歳の時に星金養鯉場の娘と結婚し、星金養鯉場が寺泊に所有していた池を引き継いだことをきっかけに、現在の寺泊の地に移り住み、1979年に独立するまで生産の手伝いをしていました。独立後、長い間、無名の養鯉場として養鯉業を営んでいましたが、1990年に現在の寺泊養鯉場として看板を出しました。当時は、紅白(星金系統)主体に生産していましたが、1995年の全国若鯉品評会種別日本一賞受賞をきっかけにダイヤ銀鱗生産に路線変更し、現在ではダイヤ銀鱗が約7割を占めています。

選別する星野さん「寺泊銀鱗」のルーツは、雌親が星金系統の紅白と雄鯉が須田系統の銀鱗です。1992年当時は紅白主体であったため、銀鱗紅白は数多く生産しなかったのですが、運良くその中から種別日本一に選ばれたことから始まりました。「寺泊銀鱗」の特徴は、大きくなっても銀が落ちない所です。普通のダイヤ銀鱗だと70cmくらいになると銀が落ちますが、ウチのダイヤ銀鱗は大きくなるにつれ銀の並びがよくなり、かつ輝きを維持できるところが特徴だと思います。やはり錦鯉は体型が一番ですから、大きな体型であることが重要です。銀の並び、銀のふき、緋の質や模様も大事ですが、やはり大きな錦鯉のゆったりして迫力ある泳ぎこそ、私たちの心が和み、癒されるものだと思います。

2000年第31回鱗友会全国錦鯉品評会75部金銀鱗優勝した「覆面をかぶった銀鱗紅白」今は飼育技術や飼育環境が進歩し、小さい頃からきれいな鯉が多すぎます。当歳、二歳まで駄鯉と呼ばれていても、その後の伸びにより素晴らしい鯉になることをほとんど見なくなりました。昔みたいに劇的に変わる出世鯉が少なくなったのは非常に残念に思います。なぜなら、私が育てた、2000年第31回鱗友会全国錦鯉品評会75部金銀鱗優勝した「覆面をかぶった銀鱗紅白」は、小さい頃は黄色でキワがこけており模様もよくない“体型だけ”の鯉だったからです。当時は誰からも見向きもされないような鯉で、野池にいれる際に「こんな鯉をこんなにいい池に入れてどうするの」と友人にからかわれましたが、「いや、この鯉は必ずよくなるはずだ」と確信をもって育てあげて、結果として優勝鯉までになりました。この時の喜びは、生産者にとっては一生忘れられないものです。

顕微鏡で鱗をチェックする現在の目標は、親鯉を負かすようなダイヤ銀鱗を作ることです。どの生産者も、先代の鯉に追いつき、追い越したいと思うものです。私の場合は、いい体型はもとより、鱗に5、6本“銀”の線が走り、見る角度によって違う輝きをするダイヤモンドのような昔のダイヤ銀鱗をまた作りたいと思っています。最近では鱗全体が銀に光るベタ銀が主流になっているからこそ、先代のような煌びやかなダイヤ銀鱗を目指していきたいです。銀鱗では総合優勝を狙うのは難しいと言われていますが、85cm以上の大きさになれば総合優勝を狙えるのではとも思ってます。

日本の国魚である錦鯉が世界に拡ることは素晴らしいことです。愛好家の方々には是非じっくり時間をかけて鯉を世話していただきたいと思います。愛好家によって池も飼育管理も違うので一概にこういう育て方がいいという助言は出来ませんが、やっぱりペットを愛するようにして錦鯉に接して、より綺麗な姿の錦鯉に育ててほしいです。特に、ダイヤ銀鱗は、他品種に比べて銀がふいてるぶん肌が弱いので、じっくり時間をかけて丁寧に世話をしていただき、自慢のダイヤ銀鱗として育ててもらえればうれしいです。


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(取材日:2006年2月20日)

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